TOEIC485点から830点までの道のり―Part3・・・700点越えの道のり

 さて、前回はTOEICで600点を超えるうえでの学習方法を述べました。今回は、700点越えの道のりを綴らせていただきます。
 結論から申しますと、2018年9月の試験で630点を取った半年後の2019年3月の試験で730点(listening350/Reading380)をスコアしました。わずか6か月で100点も上がったことに私自身、とても驚きました。
 730点がどれくらいの点数であるかというと、企業・団体が海外部門の社員に期待するレベルで(570~810点)あることがTOEICのウェブサイトに掲載されています。

www.iibc-global.org

 一番最初の投稿でも書きましたが、私、実は大学生の時に一度だけ受験したTOEICが730点でした。当時は大学受験で身に付けた英語力を落とさないために、英字新聞(今はなき『朝日イブニングニューズ』や『デイリー毎日』など)を毎日読んでいたので、英語だけは同級生たちよりできている方でした。

 ようやく学生の頃の実力を回復したのですが、どうやったのか。それを詳述いたします。
 『即戦ゼミ8 基礎英語頻出問題総演習』(上垣暁雄編著/桐原書店)で英文法の基礎を固めた後すぐに、購入しておいた『英語の構文150』(岡田伸夫監修・美誠社)を使って、短い英文を日本語訳する練習をしました。
 各構文の解説を参考にしたうえで、用意されたレベル1からレベル3の練習問題の短文をノートに一つ一つ日本語訳していくのです。問題文は1行から長くて4行ぐらいしかないので、そんなに時間はかかりません。

 

 


 『即戦ゼミ8』自体が構文を中心に据えた文法問題集なので、これを修了した方なら『構文150』の日本語訳の練習はスムーズに行けると思います。1日1構文ずつやっていくのもいいですが、それだと5ヵ月も掛かってしまう。そこで、できれば1日5構文の練習問題を解いていって、1か月で一気に仕上げることをお勧めします。1日の学習時間にすると、人にもよりますが、2~3時間で終わると思います。
 働いていらっしゃる方々の中には「そんなに時間は取れないよ」とお考えになる方もいらっしゃるでしょう。
 しかしながら、物は考えようであって、このコロナ禍の中、在宅でのリモートワークに働き方が大きく変わった方々も少なくないことでしょう。それまでは、職場までの通勤時間が往復2時間なんていう会社員はざらだったはずです。その通勤時間を丸々英語の時間に回せば、このブログをお読みいただいている方々の英語力は必ず上昇すること間違いないと断言できます。TOEIC700点の壁はいとも簡単に突破できると思います。
 例えば、コロナ以前は仕事が終わったら会社の同僚と飲みに行ったりすることも少なくなかったでしょう。夜の「飲みにケーション」は確かに社内の潤滑油として役立つことは否定するものではありません。そういう私も大の宴会好きですから。
 とはいえ、本当に飲みにケーションはそうしょっちゅう必要でしょうか?読者の中にはまだまだ50歳以下の若い世代で、会社の海外部門や海外赴任を夢見ている方もいらっしゃるやもしれません。あるいは私のように母校の大学院に進んで新しいキャリアを積みたいと考えていらっしゃる方も少なくないと推察します。
 もしそうであれば、このコロナ禍という「ニュー・ノーマル(New normal)」、すなわち「新しい日常」を迎えた今、文字通り先が読めない時代にあって、自分の夢や目標を実現するために努力するには、実はとてもいい「チャンス」なのではないかと私は考えるのです。
 自己啓発書にしばしば書かれていますが、やはり時間は自分で作るしかないと思うのです。そのためにも、以前書きましたが、「なぜ自分は英語を勉強するのか?」の問いを毎日自分に対して繰り返すことが必要となってくるわけです。
 さて、話が少しそれましたが、TOEICで700点を取れるようになると、どれくらいの英語が分かるようになれるのかをお話します。端的に言えば、日本の英字新聞が読めるようになれます。例えば、朝日新聞の英語電子版『The Asahi Shimbun Asia&Japan Watch』や毎日新聞の英語電子版『The Mainich』の記事が読めるようになります。双方とも日本語版は有料ですが、英語版はなぜか無料で読むことができます。残念ながらスマホ用のアプリがないので、「お気に入り」に登録しておけば簡単に立ち上げられます。この2紙の日本語版をどちらでもいいですので有料購読して日本語の記事を読んだうえで、英語版の記事を読むと大変勉強になりますので、ぜひお勧めしたいところです。

 さて、今回はTOEIC700点越えの道のりを綴りましたが、次回は700点台でもがき苦しむお話をさせていただきたいと思います。
To be continued.

 
 
 

TOEIC485点から830点までの道のり―Part2・・・600点越えへ

 さて、前回はTOEIC485点からの挽回を期して、英語の基礎力を養成するための教材と再聴取を始めたNHKラジオ講座をご紹介しました。
 ここでひとつ読者の方々にご注意いただきたいのは、もし4年前の私と同じレベルの英語力、つまりTOEIC500点以下の方々(とくに469点以下)がいらしたら、丸々私の模倣をすることは少し危険かもしれません。
 大学受験や海外留学を控えた受験生向けの予備校トフルゼミナールが公表している「英語試験難易度比較表」によりますと、TOEIC220-469は英検4級-英検準2級に相当するそうです。

 英検4級は「中学中級程度」、英検準2級は「高校中級程度」と、試験を主宰する日本英語検定協会のサイトに記されています。

www.eiken.or.jp

 以上のことを踏まえると、中学中級程度から高校中級程度と幅が広いのです。
 なので、もしTOEICの点数がこの範囲の方々は、まず中学英語の総復習をすることが上達の早道だと思います。実際、私は中学英語の参考書としてベストセラーになった『やさしい中学英語』(いのうえじゅんいち・学研編集部著/学研教育出版を購入し、知識があいまいだった現在完了形や不定詞の勉強をやり直しました。

 

 また、英語の発音を基礎から学ぶ上で役立つのが、NHKラジオの「基礎英語シリーズです。私が中学生だった40年以上前とは異なり、現在では「中学生の基礎英語1」「中学生の基礎英語2」「中高生の基礎英語in English」と講座数も豊富になり、放送時間も15分とコンパクトに構成されています。NHKラジオの無料アプリ「らじる★らじる」をダウンロードすれば場所を選ばずスマホで放送を聞けます。「聞き逃し」機能では前の週の放送を聴き直すこともできます。別売りのCDや音声ダウンロードを利用すれば、放送時間を気にせずいつでもスマホを使って発音練習ができるのでお勧めです。テキストは550円と格安なので、ご自身のレベルにあった講座を受講されるといいと思います。
 ここで注意していただきたいのは、「今さら中学英語かよ~」とバカにしないことです。上記のラジオ番組のネイティブスピーカーの発音を綺麗にまねできるようになれば、英検4級から準2級レベルのリスニングテストは合格します。もちろん、面接試験も。
 要は、毎日少しずつでも続けることが大切だと考えます。私はテレビはほとんど見ないので最近のCM事情には疎いのですが、ネットでよく見かける日本経済新聞のCMがいいことをいってました。
 「日経電子版では専門家の多様な意見や物の見方をいつでもどこでも読むことができる。やはり何より365日分の差は大きい。」
 英語学習の極意もここにあると信じています。毎日365日勉強する。
 私の例を引いて恐縮ですが、4年前に『即戦ゼミ8 基礎英語頻出問題総演習』(上垣暁雄編著/桐原書店)を毎日2時間かけて解きながら、遠山顕(とうやまけん)先生のNHK「ラジオ英会話」(翌2018年からは『遠山顕の英会話習』に名称変更)を毎日15分の放送と、プラス復習のための音読を15分、計30分勉強していました。『即戦ゼミ8』と合わせて2時間半毎日やったおかげで、2018年9月のTOEICで630点(listening305点/Reading325点)を取ることができました。1年余りで145点アップできたのです。これは嬉しかったです。
 さて、今回はTOEICの低得点者へのアドバイスと私の600点越えに至る過程を綴りました。次回は、700点という大きな壁を突き破る上での悪戦苦闘ぶりを述べたいと思います。
To be continued.
 

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TOEIC485点から830点までの道のり―Part1

 さて、今回は4年前(2017年)の6月に受けたTOEICで485点だった私が、ちょうど4年後の今年4月の試験で830点を取るまでに至った学習方法とマインドセット(心構え)について述べたいと思います。
 500点にも満たなかったことにがっかりしてばかりでは先に進みません。私は早速書店に行き、英文法の問題集を買いました。選んだのは『即戦ゼミ8 基礎英語頻出問題総演習』(上垣暁雄編著/桐原書店。この『即戦ゼミ』は他にも二つのシリーズがあって、『即戦ゼミ3大学入試英語頻出問題総演習』は初版が1985年の大ベストセラーであります。ただ、この問題集は難関大学志望者向けに作られているので、私は基礎を固めるのが先決だと思い、前者を選びました。

 

TOEICテスト対策

 さらに、たまたま近所のBOOKOFFで、高校時代に使っていた『英語の構文150』(岡田伸夫監修/美誠社)が定価の半額で、かつ新品同様で売られていたので迷わず購入。判型と監修者こそ替わっていたものの、昔の本のコンセプトを受け継いだ内容だったので、文法の問題集を終えた後にこれを勉強することにしました。

 

 加えて、リスニング対策のために遠山顕(とうやまけん)先生のNHK「ラジオ英会話」(当時。現在は『遠山顕の英会話習』に名称変更)も聞き始めました。遠山先生は非常に気さくで明るい方で、番組を聞かれたことのある方は先生の魅力に惹(ひ)かれて聞き続けていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。加えて、アシスタントのネイティブスピーカーのジェフ・マニングさんとケイティ・アドラーさん(当時)の美しいアメリカ英語とユーモアたっぷりのお人柄が、この番組のセールスポイントのひとつであったことは間違いありません。
 さて、ここで読者の中にはこう思う方もいらっしゃるでしょう。それは「文法なんかやって意味があるのか?」「やっぱりスピーキングが大切だろう」「英語は聞き流すだけで話せるんじゃないか」と。
 結論から言いますと、英語を短期間に伸ばす方法は文法と構文を完全に習得することだと私は考えます。高額の英語教材を買って、聞き流すだけの「手抜き勉強」では絶対に実力は付かないことは断言できます。
 TOEICを受験されたことがある方はご存じだと思いますが、120分の試験のうち前半45分のPart1からPart4の100問はリスニングです。残り75分のPart5からPart7の100問がリーディング。私は公式問題集を購入して、一回分の試験を制限時間なしで解いてみました。
 すると、リスニングは何度聞いても分からない。何度聞いても。そこで解答・解説文を読んでみると、ネイティブが話している英語が、”読んでも理解できない”のです。ゆっくりと前へ後ろへと英文をたどりながら読んでも分からない。つまり、読んで分からない英文は聞いても分からないことに気づいたのです。
 ということは、まず最低でもリスニングテストで話される英語を読めるだけの英文法力と英文解釈力が必要となる。そして、リーディングの問題を解いてみると、やはりこのことが痛感させられたのです。
 リーディングはPart5で文法・語法問題、Part6で短文を読解のうえ穴埋めする問題、Part7は長文読解問題が大量にあります。
 私は、このPart5が全部解けるくらい文法力をつけることを優先したわけです。
 さて、最後に英語を学習していく上でのマインドセット(心構え)について簡単に述べますと、私は「なぜ、自分は英語を勉強するんだ」という理由なり目的を毎日考え続けることだと思っています。私がなぜ英語を51歳から始めた理由については、第1回の投稿に詳しく記しました。
 ただ漠然と英語ぐらいやっておいた方がいいだろう、とお考えの方には英語学習はお勧めしません。それこそ時間とお金の無駄です。仕事で必要になった、あるいは近々海外赴任することになったという「切羽詰まった理由・目的」のある方は上達が早いのではないでしょうか。
 この点に関しては、今後、何度となく書いていきたいと思います。次回は、スタートさせた基礎学習からの七転八倒(しちてんばっとう)ぶりを綴る予定です。

To be continued.

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高校2年生で英検2級を取得したときのエピソードをお話します

 さて、前回、高校1年生の2学期から英語の勉強を本格化させたことをお話しました。文法は『英文法解説』(江川泰一郎著)と学校の授業で使う問題集で勉強。構文については、『基本英文700選』(伊藤和夫著)と『演習英文解釈 英語の構文150』(高梨健吉著)。そして、リスニングと会話についてはNHKラジオの「英語会話」。
 この中で一番今でもやってよかったと思うのは、『英語の構文150』でした。
 例えば、It is necessary for us to work together for world peace.
                 (私たちは世界平和のために力を合わせなければならない)
という例文についてお話しすると、この
     It is ・・・for A to 不定詞  「Aが~することは・・・である」という決まりきった型を覚えない限り、訳すことができません。個々の単語は優しいのに、Itは後に出てくる「for A to 不定詞」を示す形式主語であって、「それ」とは訳さない。「to 不定詞」の部分が真の主語(真主語)であること、そしてAは「to 不定詞」の意味上の主語であるということを理解しておかないと、解釈できないわけです。
 そうした英文を理解するうえでの決まりきった型となる文章、それが構文なわけです。これを覚えたおかげで、NHKラジオ「英語会話」の英文がほぼすべて理解できるようになりました。それから高校で使用する読解専門の教科書、いわゆるリーダーの教科書も格段に読めるようになりました。
 そうこうしているうちに高校2年生になり、6月に英検2級を受けました。筆記試験(リスニング含む)はパスしました。問題は、2次試験の面接です。一か月後に行われた試験は残念ながら不合格。というのも、3級の時の面接とは違い、渡されたカードに記された英文を読み、自分の意見を述べるという練習をしてこなかったからでした。これは悔しかったです。
 2年生の夏休みは、それまでやってきた教材の総復習に費やしました。2学期には英語担当のH先生にお願いして、週に一回放課後に面接の練習をやっていただきました。女性のH先生は前年までアメリカの大学に留学されていた方で、これまた美しいアメリカ英語を話す厳しいながらも心優しい先生でした。
 そうやって臨んだ11月の英検2級は見事合格しました。英検の面接試験を受けたことがある方はお分かりになるかと思いますが、分からない単語や言い回しを面接官がしてきたときはパニックになりがちです。事実、私は1回目の面接でパニックになりました。
 しかしながら、2回目の受験で合格できたときに感じたのは、「英語力を伸ばす大きな秘訣は場数を踏むことだ」ということでした。私はH先生という素晴らしい「面接官」に何度も英語で質問され、その質問がよく理解できなかったときは"I beg your pardon?(すいません、なんと仰ったのですか?)や”Excuse me,could you  say that again?(すいません、もう一度いってくださいませんか?)というセリフを自然に言えるようになっていたのです。そして、ラジオ「英語会話」で英米人がいかに自分の意見を論理だてて話すかに気を付けて過去のテキストを読み直し、音読暗唱に努めました。
 H先生に合格証書を持っていきお礼を述べたところ、「私の方こそ勉強になったわ」とニコニコしながら喜んでくださいました。ちょうどその頃学校で催された三大予備校の一つ河合塾全統模試で英語は偏差値69を取り、学年350人中1番を取りました。この数字が後に、志望大学を決める際の大きな要因となったことはいうまでもありません。
 H先生は翌年、他校に転出され、それ以来お会いしていません。38年たった今も先生のご恩は忘れられません。

To be continued.

英語熱が再燃した今、どんな教材を使ってきたかお話します。

 西山千先生との出会いは、高校受験に失敗し灰色の青春時代を歩き始めそうになった私に、天からの啓示を授けていただいたような気がしました。講演会から帰宅したその日のうちに近所の書店に赴き、中学2年の3月以来聞いていなかったNHKラジオ講座を聞き始めるために、東後勝明先生の「英語会話」のテキストを購入しました。その日の夜から番組を聞き始めたのはいうまでもありません。
 東後先生は早稲田大学を卒業後、ロンドン大学修士・博士課程を修了された方だったので、美しいブリティッシュ・イングリッシュを話されていました。番組の内容も大変実践的でかつ興味深いものだったこともあり、中学一年の時に「基礎英語」と巡り合った時のような興奮を覚えたものです。
 ほどなく高校一年の2学期が始まるとすぐに、英語担当のT先生のもとを訪れ「先生、英検2級を取るにはどうしたらいいですか?」と質問しました。西山先生との出会いと英語熱が再燃した旨を伝えたところ、「今聞いているNHKラジオ講座のテキストを丸々暗記していけばすぐに受かるよ」とさらりとおっしゃる。
 T先生はご自身が高校生の時にAFS(アメリカン・フィールド・サービス)の交換留学制度を利用してアメリカに一年間留学された方でした。アメリカ英語の美しい発音で指導してくださる若きジェントルマンで、「私もNHKのラジオ講座のテキストを丸々暗記していったから留学先で英語に困ることはあまりなかったぞ」というのです。
 「同時になんでもいいから英文法の参考書を買って、学校の文法の問題集をしっかりやったほうが上達は早いぞ」
 善は急げ、ですぐさま書店に向かい、英文法の参考書をいくつか比較検討。そのなかでも「これは面白そうだ」と思った本が、後に不朽の名著と知ることになる江川泰一郎先生の『英文法解説』(金子書房)でした。この本は現在NHKの「ラジオ英会話」を担当されている大西泰斗先生もその著書の中で勧めている傑作の一つです。
 その日問題集で解くべき文法項目を『英文法解説』で勉強し、すぐに問題集を解く。その繰り返しで問題集を2、3回繰り返しました。その後、T先生から「次は構文を扱った参考書なり例文集を使って、構文を500個前後丸暗記すれば文法に関してはほぼ完璧になる」とアドバイスを受け、当時、受験英語の神様と称された駿台予備校講師、伊藤和夫先生の『基本英文700選』(現在は絶版。新シリーズがあります)を買ってきました。40代後半以降の方ならこの『700選』に挑戦された方も少なくないでしょう。私は一日あたり70の例文を書きながらかつ音読を繰り返し10日で終了させ、ひと月で3回繰り返しました。さらに、ポケットサイズのメモ帳に例文を書き込み、常にポケットに入れて学校の休憩時間や通学時間に開いては、ぶつぶつと小声で音読しました。
 ただ、この『700選』の欠点は解説が少なすぎて、なぜこの構文がそうした意味になるか分からない例文が多かったことです。そこでより解説の多くて英文解釈の練習も兼ねた参考書として高梨健吉先生の『演習英文解釈 英語の構文150』(美誠社/現在は絶版)で勉強をしました。この『英語の構文150』も構文参考書としては大変な名著で、現在でも著者あるいは監修者が変わりつつも、初版のコンセプトを受け継ぎながら新しいシリーズが販売されています。丁寧な訳文と解説が魅力なのでお勧めしたい一冊です。
 さて、本日は英語熱が再燃した高校一年の後半、どういうテキストで勉強してきたかを記しました。次回は、この勉強を経て、いかにして英検2級を取得したかを述べたいと思います。
To be continued.
 

私の英語遍歴(エピソード2)-同時通訳の神様・西山千先生の言葉に発奮する

 さて、前回は同時通訳の神様と謳われた西山千(にしやません)先生にぶしつけな質問をしたことを記しました。
 先生は1969年7月20日アメリカ合衆国アポロ11号が人類史上初めて月面に着陸した際の同時通訳者でした。この世紀の大偉業に通訳者として臨んだ西山先生は、大いに興奮し緊張したそうです。
 そして月着陸船イーグルからニール・アームストロング船長が月に降り立った時、こういったそうです。
"That's one small step for man."
  このとき先生は一瞬「!?」となったそうです。アームストロングは「man」の前に不定冠詞の「a」をいわなかったから。そのため先生は「人類にとって小さな一歩です」と通訳した。生放送だったため、「for man」のあと何といったか聞こえなかったそうです。むにゃにゃとしか。
 その夜の7時のニュースが放送される前に、アメリカ・ヒューストンにあるNASAアメリカ航空宇宙局)からアームストロングが語った全文のテレックスが来て、何としゃべっていたかが分かりました。彼は”One step for man,one giant leap for mankind."といっていたのです。やはり不定冠詞が入っていない。「a man」ではなくて、「man」といっている。
 当時は、「man」といえば人類を指したそうです。私が先生にこの話を伺った1982年頃には「humankind」と表現すると仰ってました。
 要するに、アームストロング船長の英語が不正確だったのです。西山先生は、夜のニュースで同時通訳した際、「一人の男には小さな一歩、人類にとっては巨大な飛躍です」と正しく通訳したそうです。けれども、最初の生放送で通訳した映像と音声が記録されており、その後もずっとそれがメディアで使用されることとなったそうです。
 「当時の通信環境を考えれば、無理もないと慰めてくださる方もいらっしゃいましたが、あれは”世紀の誤訳”として語り継がれてしまいました。」
 先生はニコニコしながらつい昨日のことのように当時のことを語ってくださいました。その話をきっかけに、ランチ会に出席した人たちは次から次と先生に質問を寄せていました。中には、自分も通訳を目指して勉強しているが、どのような努力が必要ですかといった質問も飛び、その一つ一つに先生は丁寧な回答をなさっていました。
 ランチ会も終わりに近づいた頃、私はもうひとつ質問しました。「私も将来は先生のように英語を使う仕事をしてみたいと思うようになりました。今やっておくべきことは何でしょうか?」
 すると先生はこう答えられました。
「あなたぐらいの年齢の人にテクニックや技術論を話してもあまり意味がないと思います。ただ、私はいろんなところで話していますが、日本人が英語を身に付けるうえで大切なことはハングリー精神だと思います。英語がちゃんとできるようになるのは、自分の生活とか、自分が達成しようとしている目的に、英語がどれだけ大切であるか。自分のこれからの生活に関わるものだったら、ハングリー精神で努力して一生懸命やるわけです。ハングリー精神があれば英語は自然と上手くなるものですよ。」
 高度経済成長期に生まれ育った私には、先生のおっしゃるハングリー精神という言葉がその時すぐには理解できませんでした。しかしその後、大学受験や就職、転職、そして病気など様々な経験をするようになって、もうすぐ55歳になろうとする今、先生のお言葉が分かるようになった気がします。このブログを開設したのも英語学習を再開したのも、ハングリー精神によるものだと。
 西山先生は2007年7月2日、永眠されました。享年95。

 

 

私の英語遍歴(エピソード1)――小さな挫折と偉大なる人物との出会い

 さて、前回は私の英語との出会いをお話させていただきました。本日は、その後、どのように英語を勉強していったか、すなわち私の英語遍歴を失敗談を交えて述べさせていただきます。
  前回も触れましたが、中学2年生の秋に英検3級(中学卒業程度)を取得したことで気分を良くしたことと、リンガフォンの米語スタンダードコースのカリキュラムを一年間で修了したこともあって、次は英検2級だ!と意気込んでおりました。
 ところが、高校入試ですべり止めに受けた高校がまさかの不合格となり、第1志望校を断念して第3志望校に行かざるを得ないという挫折を味わったことで、英語から遠ざかることになりました。
 高校に入っても楽しくなく、みじめな日々。英語の授業も、予習をしないで臨んでいたから次第に分からなくなりました。英語の勉強をやっている方はうすうす気づいていらっしゃると思いますが、英語の勉強は毎日5分でも10分でも続けていればかろうじて現状維持はできる。しかし、全くやっていないと、ある日突然、教科書の文章が全く分からないという現象に陥ります。
 これを数学と対比すると興味深いことが判明します。それは、数学という教科は、もし次の日の授業の予習をしないで臨んだら、その日の授業はさっぱり分からない、という経験をするものです。数学の公式や定理の意味を予め理解しておかないと、授業についていけないわけです。なので、否が応でも予習せざるをえない。
 さて、灰色で始まった高校生活にちょっとした変化が訪れたのは、ある人との巡り合いでした。高校一年生の夏休みに、中学三年生時の担任で英語の先生だったN先生から連絡があり、「今度の日曜日福岡市で、アポロ11号月面着陸の同時通訳を行った西山千(にしやません)先生の講演会があるからいかない?」と誘われたのでした。N先生は大学を出てまだ数年の若い女性の先生で、とってもチャーミングな方だったので二つ返事で同行させてもらいました。
 当日は、西山先生とイギリス人の詩人の男性との対談形式の講演会でした。それゆえすべて英語で行われたのですが、来場者の多くが英語教育に関わる人々だったこともあり、講演会後の質疑応答もすべて英語でなされるなど大変刺激的な講演会でした。残念ながら英検3級の私では到底聞き取れるわけもなく、約90分間は念仏でも聞いているかのような時間でした。
 しかし、その後、来場者の有志10人ほどと西山先生を囲んでランチ会が行われた時でした。参加者の人々が、同時通訳の神様とまで謳われた西山先生を前にしてたじろいだのでしょう、先生の真正面の席に誰も座ろうとしない。そこで私は図々しく先生に一礼してその席に座り、「先生、アポロ11号の月面着陸の時には、先生は大失敗をしてしまったと伺いました。その時のエピソードをもう少しお話しいただけませんか?」
 すると、西山先生はニッコリと微笑まれ、「あの時は私も『やっちゃったぁ』と、今思い起こしても冷汗が出るんですよ」と切り出されました。
 さて、今回はここまでといたします。同時通訳の神様・西山先生は何を大失敗したのかを次回詳細に記させていただきます。

To be continued.