私の英語遍歴(エピソード1)――小さな挫折と偉大なる人物との出会い

 さて、前回は私の英語との出会いをお話させていただきました。本日は、その後、どのように英語を勉強していったか、すなわち私の英語遍歴を失敗談を交えて述べさせていただきます。
  前回も触れましたが、中学2年生の秋に英検3級(中学卒業程度)を取得したことで気分を良くしたことと、リンガフォンの米語スタンダードコースのカリキュラムを一年間で修了したこともあって、次は英検2級だ!と意気込んでおりました。
 ところが、高校入試ですべり止めに受けた高校がまさかの不合格となり、第1志望校を断念して第3志望校に行かざるを得ないという挫折を味わったことで、英語から遠ざかることになりました。
 高校に入っても楽しくなく、みじめな日々。英語の授業も、予習をしないで臨んでいたから次第に分からなくなりました。英語の勉強をやっている方はうすうす気づいていらっしゃると思いますが、英語の勉強は毎日5分でも10分でも続けていればかろうじて現状維持はできる。しかし、全くやっていないと、ある日突然、教科書の文章が全く分からないという現象に陥ります。
 これを数学と対比すると興味深いことが判明します。それは、数学という教科は、もし次の日の授業の予習をしないで臨んだら、その日の授業はさっぱり分からない、という経験をするものです。数学の公式や定理の意味を予め理解しておかないと、授業についていけないわけです。なので、否が応でも予習せざるをえない。
 さて、灰色で始まった高校生活にちょっとした変化が訪れたのは、ある人との巡り合いでした。高校一年生の夏休みに、中学三年生時の担任で英語の先生だったN先生から連絡があり、「今度の日曜日福岡市で、アポロ11号月面着陸の同時通訳を行った西山千(にしやません)先生の講演会があるからいかない?」と誘われたのでした。N先生は大学を出てまだ数年の若い女性の先生で、とってもチャーミングな方だったので二つ返事で同行させてもらいました。
 当日は、西山先生とイギリス人の詩人の男性との対談形式の講演会でした。それゆえすべて英語で行われたのですが、来場者の多くが英語教育に関わる人々だったこともあり、講演会後の質疑応答もすべて英語でなされるなど大変刺激的な講演会でした。残念ながら英検3級の私では到底聞き取れるわけもなく、約90分間は念仏でも聞いているかのような時間でした。
 しかし、その後、来場者の有志10人ほどと西山先生を囲んでランチ会が行われた時でした。参加者の人々が、同時通訳の神様とまで謳われた西山先生を前にしてたじろいだのでしょう、先生の真正面の席に誰も座ろうとしない。そこで私は図々しく先生に一礼してその席に座り、「先生、アポロ11号の月面着陸の時には、先生は大失敗をしてしまったと伺いました。その時のエピソードをもう少しお話しいただけませんか?」
 すると、西山先生はニッコリと微笑まれ、「あの時は私も『やっちゃったぁ』と、今思い起こしても冷汗が出るんですよ」と切り出されました。
 さて、今回はここまでといたします。同時通訳の神様・西山先生は何を大失敗したのかを次回詳細に記させていただきます。

To be continued.