英語熱が再燃した今、どんな教材を使ってきたかお話します。

 西山千先生との出会いは、高校受験に失敗し灰色の青春時代を歩き始めそうになった私に、天からの啓示を授けていただいたような気がしました。講演会から帰宅したその日のうちに近所の書店に赴き、中学2年の3月以来聞いていなかったNHKラジオ講座を聞き始めるために、東後勝明先生の「英語会話」のテキストを購入しました。その日の夜から番組を聞き始めたのはいうまでもありません。
 東後先生は早稲田大学を卒業後、ロンドン大学修士・博士課程を修了された方だったので、美しいブリティッシュ・イングリッシュを話されていました。番組の内容も大変実践的でかつ興味深いものだったこともあり、中学一年の時に「基礎英語」と巡り合った時のような興奮を覚えたものです。
 ほどなく高校一年の2学期が始まるとすぐに、英語担当のT先生のもとを訪れ「先生、英検2級を取るにはどうしたらいいですか?」と質問しました。西山先生との出会いと英語熱が再燃した旨を伝えたところ、「今聞いているNHKラジオ講座のテキストを丸々暗記していけばすぐに受かるよ」とさらりとおっしゃる。
 T先生はご自身が高校生の時にAFS(アメリカン・フィールド・サービス)の交換留学制度を利用してアメリカに一年間留学された方でした。アメリカ英語の美しい発音で指導してくださる若きジェントルマンで、「私もNHKのラジオ講座のテキストを丸々暗記していったから留学先で英語に困ることはあまりなかったぞ」というのです。
 「同時になんでもいいから英文法の参考書を買って、学校の文法の問題集をしっかりやったほうが上達は早いぞ」
 善は急げ、ですぐさま書店に向かい、英文法の参考書をいくつか比較検討。そのなかでも「これは面白そうだ」と思った本が、後に不朽の名著と知ることになる江川泰一郎先生の『英文法解説』(金子書房)でした。この本は現在NHKの「ラジオ英会話」を担当されている大西泰斗先生もその著書の中で勧めている傑作の一つです。
 その日問題集で解くべき文法項目を『英文法解説』で勉強し、すぐに問題集を解く。その繰り返しで問題集を2、3回繰り返しました。その後、T先生から「次は構文を扱った参考書なり例文集を使って、構文を500個前後丸暗記すれば文法に関してはほぼ完璧になる」とアドバイスを受け、当時、受験英語の神様と称された駿台予備校講師、伊藤和夫先生の『基本英文700選』(現在は絶版。新シリーズがあります)を買ってきました。40代後半以降の方ならこの『700選』に挑戦された方も少なくないでしょう。私は一日あたり70の例文を書きながらかつ音読を繰り返し10日で終了させ、ひと月で3回繰り返しました。さらに、ポケットサイズのメモ帳に例文を書き込み、常にポケットに入れて学校の休憩時間や通学時間に開いては、ぶつぶつと小声で音読しました。
 ただ、この『700選』の欠点は解説が少なすぎて、なぜこの構文がそうした意味になるか分からない例文が多かったことです。そこでより解説の多くて英文解釈の練習も兼ねた参考書として高梨健吉先生の『演習英文解釈 英語の構文150』(美誠社/現在は絶版)で勉強をしました。この『英語の構文150』も構文参考書としては大変な名著で、現在でも著者あるいは監修者が変わりつつも、初版のコンセプトを受け継ぎながら新しいシリーズが販売されています。丁寧な訳文と解説が魅力なのでお勧めしたい一冊です。
 さて、本日は英語熱が再燃した高校一年の後半、どういうテキストで勉強してきたかを記しました。次回は、この勉強を経て、いかにして英検2級を取得したかを述べたいと思います。
To be continued.