さて、以前、私はアメリカ大統領報道官のJen Psaki(ジェン・サキ)氏のファンであると公言しました。赤毛の美しい女性であるとともに、カミソリのように頭の切れる氏のブリーフィング(記者会見)は、見ていて清々(すがすが)しく思えました。
そのサキ氏が今週の13日(金)をもって退任することが先週発表されました。後任には、大統領副報道官のKarine Jean-Pierre(カリーン・ジャンピエール)氏が昇格するとのこと。
日本でもこの件は大きく報道されました。というのも、大統領報道官として初の黒人が選ばれ、かつジャンピエール氏が自ら同性愛者であることを公言しているからです。多様性を重視するバイデン政権を象徴する人事となりました。
現職のサキ氏は、会見場に詰めかけた記者たちの鋭い質問にバッサバッサと答える「やり手」でした。私が驚いたのは、記者たちの質問にほとんど原稿を見ないでクイック・レスポンス(即答)する点でした。
これが日本の官房長官の場合、事前に記者たちから質問を提出させて、その回答を官僚たちに書かせて自分はただその作文を読むだけという超まぬけな記者会見なので、緊張感もへったくれもありません。
後任のジャンピエール氏には、サキ氏を超えるくらいの活躍をして欲しいと思っています。来週からのブリーフィングが楽しみになりました。
それにしても、多様性を重んじるアメリカ政治の懐の深さには感心いたします。人種的に少数派である黒人を政府の要職につける。それも性的少数者(LGBTQ)を公にしている人物を。
翻って、日本で性的少数者が政府の要職に就く日は来るのでしょうか。私はまだまだその日は遠いと考えています。なぜなら、日本の政治家の意識の低さと、それを正すべき日本のマスコミの意識の低さの2つが挙げられます。
日本の政治家、特に保守系政治家で性的少数者の権利を主張する人物を私は知りません。また、日本の週刊誌を中心としたゴシップ・ジャーナリズムは、芸能人や政治家など公人の性的嗜好をセンセーショナルに書き立てます。そこに人権意識は見出されません。
同性カップルを自治体が証明したり、宣誓を受け付けたりする「パートナーシップ制度」を採用する自治体が少しずつですが、増えてきました。こうした流れは、勇気ある性的少数者たちとその支援者たちが声を上げてきたからこそ実現してきました。
私は、日本における性的少数者が政治の表舞台に出るためには、やはり政権交代を実現するしかないと考えています。現在の自公政権が続いている限り、アメリカのジャンピエール氏のような人物が官房長官に就任することはないでしょう。
政権交代というと、民主党政権時代の迷走ぶりを思い出し、拒否反応を示す人は少なくないでしょう。しかし、民主主義を標榜する世界の国々の中で、日本ほど政権交代のない国は他にありません。アメリカを始め、G7に含まれる国々で、これほど長期にわたって保守政党が政権を握っている国は日本だけです。確かに野党は頼りないと考える人は少なくないでしょう。しかしながら、民主党政権の失敗から学ぶことはたくさんありました。
日本における多様性がさらに進化するためには、いま一度、政権交代を実現し、多様な価値観を尊重する政党(それも一党に限らず)に政治を任せることが一番の近道と考えます。
今回は英語学習を離れ、「アメリカ政治における多様性と日本の場合」について考察してみました。
〜〜本日の元気の出る英語〜〜
We make progress if, and only if, we are prepared to learn from our mistakes.
Karl R. Popper
もし失敗から学ぶ準備ができたなら、いや、準備ができた時にのみ、われわれは進歩する。
カール・ポッパー(哲学者)